こんばんは。
映画「メッセージ」を観ました。
予告動画、あらすじ、感想、おまけ情報をまとめます。
2017年5月に日本で公開された本作。
真っ黒で不気味な宇宙船が映る印象的なポスターで、公開前から話題になりました。
“ばかうけ”そっくりとか言われて映画の内容とは別のところで盛り上がっていましたが……。
その効果で、結構観た人が多かったみたいです。
さらに、ポスターのタイトルで、「セ」だけがフォントが違うことでも話題に。
その辺りも、記事最後のおまけ部分で軽くまとめてみました。
予告
(公式HPより)
ということで今回はあらすじも引っ張ってきました。
宇宙人と言語コミュニケーションを図るって珍しいテーマですよね。
喋るまでもなく戦い始める映画の方が多そうです。イメージですが。
戦車や戦闘機でバチバチに殴り合った方が派手で「映画映え」(回文みたい)します。
言語という”地味なテーマ”を扱う本作は、SF要素を巧みに絡めて独特のストーリーを展開。
さらに、ポスターに映る宇宙船を始め、宇宙人「ヘプタポッド」、そしてヘプタポッドが扱う文字と、素晴らしい「デザイン」の力で画面に釘付けにされます。
そして音楽、効果音もハイレベル。それぞれが、作品全体のクオリティを高めています。
作中で初めて宇宙人と向かい合うシーンは、最早神々しさすら感じます。

予告編より
「メッセージ」をネタバレ無しで語るのはもったいないので早速感想に行きます。
感想 ネタバレあり
美しい世界観
映画「メッセージ」は、上述の通り重要モチーフが美しいデザインで描かれています。
アカデミー美術賞にもノミネートされていました。
(その年の受賞はラ・ラ・ランドです)
映画【ラ・ラ・ランド】批判しない感想 夢のような映画、映画のような夢
私はSF映画を観る上で、視覚の説得力はとても重要だと思っています。
映像が美しいことで、違和感なく話に入っていくことができるだけでなく、それだけで映画全体の世界観を構成し得るものです。
メインストーリーが「宇宙人の言語を解読」という視覚的に地味な構成だからこそ、すべてのモチーフが異質な美しさを放っています。
中でも宇宙人の扱う文字!

「アボット」

「コステロ」
不気味、かつカッコいい、何より環状が物語のループ構造を表していて、素晴らしすぎるデザインです。
意味をそのまま表現している文字という設定で、1文字で単語どころか文章を表しているそうです。
確かに情報量の多い図形ではありますよね。
このモチーフひとつで色々表現しすぎ。すごいです。
これを描くところを見てもわかるように、「書き順」はありません。
書き順には始まりと終わりがありますからね。
宇宙人「ヘプタポッド」のビジュアルデザインは、こちらの映像でも言及されています。
悪夢から抜け出したような見た目、
同時にどこか神聖で知的で優雅、
クジラのような存在感。
すべての要件を満たしたヘプタポッドのデザインには興奮しました。
ルイーズのフラッシュバック…ではなくフラッシュフォワードの中で、娘・ハンナが粘土遊びをするシーン。
可愛らしい動物に並んで置かれたヘプタポッドは、映画のタネ明かしの役割を果たします。
タネに気付く衝撃と同時に、粘土製ヘプタポッドはゾッとするほど強烈で、一瞬ですが衝撃的なシーンのひとつになっています。
文字、ヘプタポッドともにデザインで重要な役割を果たしていますね。
見えるのは未来ではない
「メッセージ」のストーリーの中で最も重要な部分は、宇宙人の文字言語を学習するうちに、時間の捉え方が宇宙人に寄ってしまう、という要素。
これによってルイーズは先のことがわかるようになるのですが、
おもしろいなと思ったのは、「未来がわかる」ではないことです。
「未」だ「来」ていない未来ではない。
まるで決定論のように、既に決まっている「先」が見える。
これがなんとも切ないです。
「先」の自分の講義でヘプタポッドの文字を学習し、
中国のシャン上将の電話番号を「先」で知る。
別れるとわかっていてイアンのプロポーズを受け、
死ぬとわかっていてハンナを生む。
そしてアボットも同じように、
自分が死ぬとわかっていて地球に来て、
爆発の直前に最後の「メッセージ」を残す。
なぜそんな選択をしたのか、自分でその選択ができるか。
考えさせられますよね。
SF映画でありながらもヒューマンドラマになっていて、非常におもしろかったです。
2時間でこんなストーリー作れないわ……。
まとめ
作中で登場するサピア=ウォーフの仮説は、新しい言葉を知ることで思考が変化し、現実世界が違って見えるという考え方です。
同じように、映画「メッセージ」を観た後には、世界が違って見えるかもしれません。
現実世界、人生、言語、そういうものについて考えさせられる良作SF映画でした。
おまけ
サピア=ウォーフの仮説とは?
言語相対主義ともいう。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
日本では一般に7色ですが、8色や6色、さらに明と暗の2色、という地域・民族もあるそうです(wiki調べ)。
もちろん、「見えている虹」は同じでしょう。
科学的には無限に色がある虹の色数は、ただその色を表現する言葉がないからとか、「7」は神聖な数字だからとかでそのように表現しているに過ぎません。
おもしろいのは、例えば2色や3色で見ている人に日本式の数え方を教えることで、7色に見えるようになることです。
同じものを「どう見えるか」ではなく「どう見るか」で捉え方が変わっているという好例ですね。
まず言葉が先にあり、それに基づいて人間は認識・思考する例です。
外国語を学習すると考え方が変わるという話は聞いたことがあるかもしれません。
もしかして、語彙が少ない人間は考え方が狭いのかな?
……私も言葉を勉強します。
フォントの違う「セ」
冒頭でも触れましたが、日本版ポスターのタイトルで、「セ」だけがフォントが違うことで話題になりました。
最初に気付いた人、すごいな。
この「セ」はすべての広告で明朝体になっていて、誤植ではありません。
また、制作のアメリカを始め、他国ではこの演出はないようです。
到着、到来、新生児などの意味があります。
日本版を配給しているソニー・ピクチャーズは以下のようにコメントしています。
変化しているのは「セ」だけです。
なぜ「メ」「ッ」「ー」「ジ」ではなく「セ」なのでしょう。
原題(ARRIVAL)からタイトルが変わっているので、文字自体に意味はないと思います。
ソニー・ピクチャーズのコメントからもわかりますね。
というか、映画観た人なら全員わかると思いますが。
文字そのものではなく、おそらく5文字のうちの3文字目、真ん中の文字というのが重要です。
通常、日本語は左から右に順番に読みます。
左から始まって、右で終わります。
真ん中の「セ」を意識させることで、作中の宇宙人が使う文字のように順番がなく、物語のループ構造を暗示しているのでしょう。
これはおもしろいマーケティングですね。タイトルロゴだけでちょっとしたバズを起こせる。
もしかしたら、最初に言い出した人は日本版の制作スタッフかもしれませんね。
ヘプタポッドの文字の解析コードソース公開
「メッセージ」の監修には、現存の理論物理学者で数学ソフト「Mathematica」の開発者でもあるスティーブン・ウルフラムさんとその息子クリストファー・ウルフラムさんが携わっています。
文字の解析にはウルフラムさんが開発したWolfram言語が用いられているとのこと。

ヘプタポッドの文字を解析
なんのこっちゃわかりませんが。
このソースコードがGitHubで公開されています。
参考
Arrival-Movie-Live-CodingGitHub
もしお近くに宇宙人が来たら使ってください。
ばかうけ
本作のポスターが世に出回り始めてすぐ、ネットでは
「巨大な”ばかうけ”に見える」
ということで話題になりました。
これを受けて、本作の監督ドゥニ・ヴィルヌーヴさんが
「宇宙船のデザインは”ばかうけ”に影響を受けたよ」とコメント。
ユーモアのある素敵な方です。
これでは終わりません。
最後には、”ばかうけ”を販売する株式会社栗山米菓の社長まで参戦。
「ネットでの話題を聞きそのビジュアルを見たとき、私の目から見ても”ばかうけ”にしか見えず、他人事だとは思えない運命的なものを感じました」
とコメント。
ドタバタしてきました。
そして、ついに映画「メッセージ」と”ばかうけ”の正式コラボポスターが実現したのです。
「おかげ様で”ばかうけ”大ヒット!」
楽しそうでなによりです。
余談ですが、”ばかうけ”って書くときの「” ”」(ダブルクオーテーション)がめっちゃめんどくさかった。
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